「光」「電気」「熱」「圧力」などの外部からの刺激に応答する物質を創出し、それらの物質が、どのようなメカニズムで外部刺激に応答するのかを物理化学を中心とする基礎科学的観点から明らかにする研究を行っています。また、それらを具体的な応用に結び付けることも意識しています。現在は特に、フォトクロミック材料(光の刺激に応答して色彩が可逆的に変化する材料。また、それに伴って、構造や物性も可逆的に変化する)や固体発光材料に興味をもって研究を進めています。

 

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水蒸気で消去できるメカノフルオロクロミックペーパー

 すでにAAPyなどのピレン系誘導体結晶がメカノフルオロクロミズムを示すことを明らかにしていましたが(下記参照)、AAPyを染み込ませた濾紙もメカノフルオロクロミズムを示すことを見出しました。さらに、ここで観測されるメカノフルオロクロミック挙動が結晶系とは全く異なっていることを明らかにし、濾紙の膜厚が変化することが重要な役割を果たしていることを見出しました。濾紙をひっかくと、その部分だけ発光色が変化して文字が読めるようになり、水蒸気にさらすと文字が消去されます (Dyes Pigm., 2017, 141, 48-52)

AAPyを染み込ませた濾紙のメカノフルオロクロミズム

 

 

息を吹きかけると蛍光発光強度が変化する混合膜

 発光性アモルファス分子材料であるBMABABMAAPp-トルエンスルホン酸(TsOH)との混合膜は、乾燥した環境下で紫外線を照射しても蛍光をほとんど発しませんが、息を吹きかけると蛍光発光強度が顕著に増大し、吹きかけるのをやめるとまた消光します。この現象は、アゾベンゼン系材料とTsOHとの混合膜で観測された息による色彩変化の場合と同様、呼気中に含まれる水分が影響していると考えられます (ChemistrySelect, 2016, 1, 1737-1740)

BMABA-TsOH混合膜の蛍光発光強度変化

息を吹きかけると >>>

 

<< 吹きかけるのを

やめると

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偏光を照射すると偏光方向に伸びる粒子

 アゾベンゼン系の低分子系アモルファス材料の粒子を寒天ゲル中に保持し、ここにフォトクロミック反応が誘起される波長の偏光を照射すると、微粒子が偏光方向と平行に伸長します (RSC Adv., 2016, 6, 36761-36765)

寒天ゲル中のBFlAB粒子の光変形

動画

 

 

摩砕すると発光色がかわる蛍光色素:その2

 すでに報告している系(下参照)とは異なる新しいメカノフルオロクロミック材料として、一連の1-(アルカノイルアミノ)ピレンを開発しました。これらの結晶を摩砕すると青紫色の発光が黄緑色に変化し、エタノールなどの溶剤にさらすと元の発光色に戻ります。結晶中ではアミド基を介しての分子間水素結合により分子配列が規制されてJ会合体を形成していて、そこからの発光が観測されるのに対し、結晶を摩砕すると結晶内の欠陥が増加し、エキシマー発光が増大して発光色が変化すると考えられます。また、溶剤にさらすと格子欠陥が修復され、元の発光色に戻ります (ChemPhysChem, 2015, 16, 3038-3043)

AAPyのメカノフルオロクロミズム

摩砕 >>

溶剤処理 >>

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息を吹きかけると色が変化する混合膜

 アゾベンゼン系アモルファス分子材料であるBMABPBABp-トルエンスルホン酸(TsOH)との混合膜は、息を吹きかけると青紫色から黄色に変化し、吹きかけるのをやめると元の青紫色に戻ります。この変化は何度でも繰り返すことができ、応用の観点からも興味がもたれます。この現象は、呼気中に含まれる水分が影響していると考えられます (RSC Adv., 2015, 5, 2934-2937)

BMAB-TsOH混合膜の色彩変化

息を吹きかけると >>>

 

<< 吹きかけるのをやめると

動画(再生速度はリアルタイムです)

 

 

発光色が変化する凝集誘起発光微粒子懸濁液

 これまでに、ソルバトフルオロクロミズムやメカノフルオロクロミズムを示すことを明らかにしているBMABAは、エタノール溶液中ではほとんど蛍光を発しませんが、水中に滴下して凝集させると強い蛍光を発するようになります(凝集誘起発光)。これは、水中で凝集して微粒子を形成することにより、消光の原因となっていたエタノール分子がBMABA分子の周囲から排除されるためであると考えられます。興味深いことに、得られた懸濁液を加熱撹拌処理することによって発光色が変化します。これは、懸濁液中のBMABA微粒子がアモルファス(過冷却液体)状態から結晶状態に変化するためと考えられます(ChemPhysChem, 2013, 17, 3898-3901)

エタノール溶液(右)を水(左)に

滴下した時の発光の様子

凝集微粒子懸濁液の発光色変化

動画

加熱撹拌

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二成分混合低分子系アモルファス膜の相分離

 アゾベンゼン系の低分子系アモルファス材料と四級アンモニウム塩の混合アモルファス膜を加熱していくと、相分離して散逸的なマイクロパターンが形成され、適当な溶媒で洗浄することで、ポジ・ネガ両方のパターンを得ることができます。この相分離は加熱だけでなく光照射によっても誘起でき、混合アモルファス膜にレーザー光を干渉露光した後、ヘキサンで洗浄することにより、四級アンモニウム塩によりレリーフ回折格子を形成させることができます(Appl. Phys. Express, 2013, 6, 035602)

相分離後ヘキサンで洗浄して

得られるマイクロパターン

四級アンモニウム塩で

形成されたSRG

 

 

光をあてると自ら移動するガラス破片

 アゾベンゼン系の低分子系アモルファス材料の膜にレーザー光を斜めに照射すると、膜表面で物質流動がおこることを、少量の量子ドット(QDs)を混合した系で量子ドットが移動していく様子から明らかにしました。さらに、このアモルファス材料の破片を透明基板上におき、基板側からレーザー光を斜めにあてると、このガラス破片が自発的に動いていくことを明らかにしました(J. Mater. Chem., 2012, 22, 3702-3704)

 

膜表面に物質流動が生じ、QDsが動いていく様子

ガラス破片が動いていく様子

 

 

動画(10分の動きを早送りで表示します)

動画(30分間の動きを早送りで表示します)

 

 

摩砕すると発光色がかわる蛍光色素

 最近、結晶を機械的に粉砕・摩砕することによって発光色が変化する材料(メカノフルオロクロミック材料)が注目を集めています。本研究では、比較的単純な構造を有する分子BMABAおよびその類似体が、溶液中で溶媒極性に依存して発光色を変化させるソルバトフルオロクロミズムを示すことを明らかにするとともに、新しいタイプのメカノフルオロクロミック材料であることを見出しました(Mater. Lett., 2011, 65, 2658-2661; Dyes Pigm., 2013, 96, 76-80)

BMABAのソルバトフルオロクロミズム

BMABAのメカノフルオロクロミズム

摩 砕 >>>

<< 室温放置

 

 

周囲の分子をひき連れて動くアゾベンゼン誘導体Chem.Lett.Editor's Choiceに選ばれました!!

 アゾベンゼン系材料のアモルファス膜にレーザー光二光波を干渉露光すると、干渉縞に対応する凹凸のレリーフ(表面レリーフ回折格子=SRG)が形成される現象が注目されています。この現象は、光の明部から暗部に向かってアゾベンゼン系分子が移動すること(光誘起物質移動)に基づくと考えられていますが、そのメカニズムの詳細はいまだ明らかとはなっていません。本研究では、光に応答するアゾベンゼン誘導体BMABと光に不活性なm-MTDATAの混合アモルファス膜を用いて光誘起SRG形成の検討を行い、この膜においてはBMAB単独のアモルファス膜よりも大きなSRGが形成されることを明らかにしました。この結果は、光照射下でBMABが移動する際に周囲に存在するm-MTDATA分子も同時に移動していることを示しており、光誘起物質移動のメカニズムを考える際に重要な知見を与えると考えられます(Chem. Lett., 2011, 40, 473-475)

SRG形成に伴う

回折効率変化

BMABm-MTDATA膜上に

形成されたSRG

 

 

光の作用でガラス化する単結晶表面

 アゾベンゼン誘導体は、単結晶の内部では十分な空間が存在しないため光異性化反応をおこさないと考えられますが、単結晶の表面では反応することが可能であると考えられます。ガラス形成能を有するアゾベンゼン誘導体(アゾベンゼン系フォトクロミックアモルファス分子材料)の単結晶の表面に光照射すると、結晶表面に存在する分子が反応して結晶構造が乱され、単結晶表面にアモルファス層が形成されます(Phys. Chem. Chem. Phys., 2010, 12, 7772-7774)

単結晶表面の光照射に伴う構造変化

光照射

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光で屈曲するマイクロファイバーHighlights in Chemical Scienceで紹介されました!!)

 アゾベンゼン系フォトクロミックアモルファス分子材料を用いて簡単にマイクロファイバーを作ることが出来ます。このファイバーに光を照射すると、ファイバーが屈曲しますが、照射する光の偏光方向を変えることによって、光源から遠ざかるほうに屈曲したり、近づくほうに屈曲したりします。つまり、光の波長や光源の位置を変えずに偏光方向を変えるだけで、屈曲方向を制御することが出来ます。この現象は、ファイバーの光照射されている部分の表面で誘起される物質移動が関係していると考えられ (J. Mater. Chem., 2010, 20, 2071-2074) 、実際にファイバー中に分散した量子ドット(QDs)の観測により、物質移動が誘起されていることを確認しています(Micromachines, 2013, 4, 128-137)

 

ファイバーの長軸に平行な偏光を照射した場合

>>> 光源から遠ざかる方向に屈曲します

ファイバーの長軸に垂直な偏光を照射した場合

>>> 光源に近づく方向に屈曲します

 

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動画(10分間の動きを早送りで表示します)

動画(10分間の動きを早送りで表示します)

 


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