超高圧合成法について

 超高圧法は数十年も前から知られている技術であり、専ら高圧物理や地球科学等の分野で広く利用されてきました。一方で、超高圧プロセスによる材料探索については非金属元素を主たる組成とした系が主流でしたが、金属-金属系や金属-金属-非金属系などにおける探索指針は未確立です。高圧下での物性変化は種々研究されていますが、私たちは主に下記に述べるような現象について注目し、それらを積極的に利用することによって、新しい化合物を探索しています。

ギガパスカル(GPa)の圧力

 圧力の単位で、Pa(パスカル)があります。私たちの住む気圧である1気圧は約10万Pa[正確には101325Pa=1013.25hPa(ヘクトパスカル)]となります。ギガパスカルとは、

1GPa=1,000,000,000Pa

ですから、つまり

1ギガパスカル(GPa)=1万気圧

となります。

 地球は右の図に示すような構造となっていますが、表層の地殻とよばれる部分の厚さが焼く数10km~100km程度あるそうです。その地殻の下の圧力が約3~5GPaとなります。
(ちなみに地球の中心は400GPa)

 ところで、ダイヤモンドがおよそ6GPa、1200~1800℃の条件で得られることからも、圧力の大きさが分かるかと思います。

GPaの圧力の世界 ~GPaは何が違う?~

 私たちはギガパスカルの圧力を使って、新しい材料の探索に取り組んでいます。では、圧力がギガパスカルになると具体的にはどういう変化があるのでしょうか?

融点の上昇

 一例として、Mgの融点について見てみると、通常(常圧)での融点は、約650℃ですが、5GPaの圧力におくことによって、融点が1000℃近くまで上昇することが分かっています。これにより、融点より高い温度を用いて固相状態での合成を行うことができます。

図 Mgの圧力による融点の変化

元素の原子体積が圧縮

 感覚的にも分かるかと思いますが、圧力を上昇させると、原子半径が小さくなります。特に、アルカリ金属、アルカリ土類金属および希土類元素で、その傾向が顕著で、5GPaの圧力下で原子体積がMgだと10%減少し、Caでは20%減少します。化合物の結晶構造を決定づける要因の一つとして、構成される元素の原子半径比などは重要な要素ですので、常圧にはない原子半径の状態で新しい化合物が見つかる可能性が広がります。

図 各元素の圧力下における原子の圧縮率の変化